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2017年6月18日 (日)

「あじさいの里」 白鳳庵@瀬谷

旧神奈川県庁舎正門_白鳳庵

今年はカラ梅雨といわれながらも、ひと雨来ればやはりそれらしい気分になってくる。
若かった頃は雨が苦手で、特に低く垂れこめた雨雲を見るだけで頭が重くなっていたが齢とともにその感覚は鈍くなってきた。
むしろひと雨ごとに庭の草木が活き活きとする様子を見るにつけ、何やら天からの授かりものを頂いているようなありがたみを覚える。
今の木造家屋に越してきてからは、屋根を打つ雨音にホッとする喜びを感じる。

しとしととした雨音に目が覚めた。
雨の日曜日か…、ぼんやりとした意識の中で雨戸の外を想像してみる。
この天気では芝刈りもできない、菜園のトマトは勢いよく伸びているはずだ。 あじさいはさぞや嬉しがっていることだろう。

そうだ、あじさいを観に行こう。
絶好のあじさい日和に違いない!そう言い聞かせてようやく床から這い出す。

ガクアジサイ_白鳳庵

「あじさいの里」 白鳳庵。
相鉄線の瀬谷駅から歩くこと約10分。 威厳のある門扉が佇む。

それもそのはず、かつての神奈川県庁舎正門がここに移築されている。
石柱の頂に据えられたガス燈に往時のハイカラを見て取ることができる。

門を抜けると、白壁の土蔵とガクアジサイが迎えてくれる。

あじさいと云えば可憐に花をつけた手毬咲のハイドロ系ホンアジサイをイメージするが原種はこのガクアジサイ。 原産国は日本だ。
18世紀にヨーロッパに持ち込まれ、品種改良が進みセイヨウアジサイが誕生した。 したがって今日目にする手毬咲のあじさいは逆輸入のセイヨウ種ということになる。

花色は土壌の酸度により酸性ならば青、アルカリ性に傾いていれば赤になるのは有名なところ。
また 咲き始めから時間が経つほどに色が変化するのもあじさいのよく知られた特徴。

敷石に誘われ、庭園奥に進む。
うっそうとした木立の下、色とりどりのあじさいが今を盛りに咲き競っている。

あじさいと緑_白鳳庵 あじさいと石像_白鳳庵
あじさいと石塔_白鳳庵 あじさいと白壁_白鳳庵

ここは個人の邸宅。
かつて横浜市議会議長を務められた故川口正英氏のお屋敷だ。
氏が十余年をかけて蒐集してこられた50種から60種のあじさい、約3,000株が植栽されている。

瀬谷で川口家といえば、江戸時代から続く旧家。故川口正英氏胸像_白鳳庵
明治期には養蚕業を興し、財を築いたと云う。
地元の名士として、正英氏は既述の通り長年公職に奉じたばかりではなく、横浜に関わる書籍を著わすなど多くの功績を残してこられた。

この庭園も私邸でありながら、あじさいの開花期に限って一般に開放されていらした。
今はやりの“オープンガーデン”のはしりと言っていい。
いわゆる「篤志家」とはこのような方を指すのかと思われる。

氏は十年ほど前の2007年に齢103歳で他界されたが、正英氏亡き後も庭園の一般開放は変わることなく継続されている。
今では毎年楽しみにされる地元のファンも多いと聞く。

徳を積んだ者は命も延びるというが、まさにそういう人となりであったと想像する。

森の茶室_白鳳庵

きょうび観光資源としてあじさいの群生造りはよく耳にするが、このように高い木立と深い緑まで再現したところは少ない。
庭園内を川が流れ昼なお暗い樹林には、しっとりとした空気が満ちている。

人手の入った里山というよりも、谷戸の雑木林を今に残しているようだ。
なるほど「瀬谷」の地名に違わぬ水に恵まれた風土を感じる。

回遊式の庭園にはいくつもの土蔵と石像、そして導かれるままに茶室が設けられている。
このような緑の中で喫する一服はさぞかし心に沁みわたることであろう。

植物の栽植にはもちろん気候風土が大きく左右するが、それだけとは思えない。
たとえ近隣に同じ品種を植えても根付かないケースはよくある。 土地の力とでも謂おうか、不思議なものだ。

古来「産土神」とか「地主神」とはこのような力を指しているのかもしれない。
その土地その土地に根差したパワーを宿しているのだ。
だからこそ人は畏れ、鎮守の杜を大切に守ってきたのであろう。

木立に守られたこの庭園にしばし佇めば、聖麗なオゾンに心身が浄化される。
「あじさいの里」 白鳳庵は土地神様を守る、鎮守の森かもしれない。


[Link] ⇒地図を見る(google map)


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