「アパッチ砦」を探せ!@聖ヶ丘団地
心の恩師の新作写真展で、久々の聖蹟桜ヶ丘。
今回は、通称“雑巾掛け”と云われる着色技法を用いて彩色写真に挑戦されている。
前回のひたすら「黒」を追いかけた作品とは作風一転。 絵画風あり、ウォーホール風あり…その変貌ぶりに驚かされる。
ご案内状の絵柄は鉄錆の模様をバラの花に見立て彩色したものと判明、先生攻めていらっしゃいますネw
中でも強く印象に残ったのは「年輪」とタイトルされた作品。
座卓におかれた御母堂の掌。 卓に表れた年輪と、か細い手に刻まれた皺のコントラストに時間の蓄積が美しく映える。
これまで対象を透徹した視点で捉えて来られた先生からは想像できないような、暖かな眼差しを感じる。
同様に御母堂の相貌を切り撮った作品と併せて、一篇の私小説を読ませていただいたような、あるいは大切な日記の一ページを覗いてしまったような、画の奥にある深い想いに心動かされた。
先生の果敢な挑戦に敬服。 次回も楽しみにさせていただきます。
ところで、時間の蓄積と云えばここ多摩市を含む広域多摩ニュータウンの開発も1966年(昭和41年)に始まりすでに半世紀を経過している。
公団による開発はすでに終了しているものの、民間企業による開発自体は未だ進行中で日々新たな建物が建てられている。 新旧混在した団地群に半世紀の時間の経過が鮮やかに写しだされているようだ。
そんな半世紀前にこの地を舞台に特撮ドラマが撮影されていた。
円谷プロダクションによる空想特撮シリーズ『ウルトラQ』「カネゴンの繭」だ。
造成により大きく削り取られた大地は非日常な風景として、また開発の象徴して絶好のロケ地であったのだろう。
金に執着する少年が不思議な繭の力でカネゴンに変身。 遊び友達からもバカにされ、途方に暮れるシーン。
ローム層の赤土を思わせる切り立った崖と夕日が印象的な画だ。
このモデルとなった地があると聞き探してみることにした。
「アパッチ砦」
といえばジョン・ウェインの映画。 造成により削り取られた台地を西部劇にお約束の切り立った岩山に見立てて、いつの頃からかそう呼ばれるようになったらしい。
台地の頂上には送電線の鉄塔が…しかしよく見ると、実はその左側にもう一つ鉄塔の脚部がわずかに見て取れる。 どうやらこの辺りがヒントとなっているようだ。
ネットで探せば、現在の聖ヶ丘団地の一隅が彼の地に相当すると判明。
桜ヶ丘の高台から鎌倉街道・乞田川を横切り、聖ヶ丘と名付けられた高台へ向かう。
桜ヶ丘線 №48。
見上げれば、青空に突き刺さった銀色が眩しい。
かつては二本あった送電鉄塔も、現在では一つに併架され上部と下部で別々の線をつなぐ特徴ある形状を成している。
鉄塔の下には屋根つきの休憩設備まで設えてある。
かつてのアパッチ砦も、今では住民の憩いのスペースとして大切にされている様子。
ここに、あの荒々しい断崖の片鱗も感じることはできない。
かつて赤茶けた大地をさらしていた風景も、半世紀の時間を経て鬱蒼とした緑で覆われている。
今となってはカネゴンが腰を下ろしていた場所も判別できないほど風景は変わってしまっていた。
迷いつつ、ひじり坂の途中に架かる遊歩道からそれ風な絵を探してみる。
それにしても、つくづくよくやったものだと感嘆する。
大地を削って盛って、均して建てて…
なにやらこのニュータウン自体が巨大なランドアートの作品にさえ思えてくる。
さて「カネゴンの繭」は、遊び仲間の奮闘によりカネゴンから無事元の少年に戻ることができたのだが喜び勇んで家に帰れば両親がカネゴンに変身していた、というブラックな落ちで物語は終わる。
以来この国には、困ったことに、カネゴンが増殖してしまった。
きょうびのカネゴンたちは都心のタワマン上層階にことのほか執着するようで、ニュータウンには空き家が目立つ。
今だけ、金だけ、自分だけ…カネゴンには時間の蓄積など興味がないらしい。
今度は、人間の方がこの景色を眺めつつ途方に暮れるのだろうか?
[Link] ⇒地図を見る(google map)
昭和44年5月7日撮影 アパッチ砦:パルテノン多摩 定点撮影プロジェクト WEBギャラリー
http://www.parthenon.or.jp/teitensatuei/gallery/archives/91.html
ゆう桜ヶ丘:コミュニティーセンター
http://www.u-sakuragaoka.gr.jp/
ゆう桜ヶ丘:イベント報告
http://www.u-sakuragaoka.gr.jp/u-sakuragaoka/event/eventh29/1707gyallykawasaki/1707gyallykawasaki.html
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